事例に学ぶ役員の責任

事 例

大阪地判平成23年10月31日
商品先物取引を行う会社の従業員による過当営業行為によって損失を被ったとして、顧客28名が取締役及び監査役に対して、損害賠償を請求した事案。

退任した
代表取締役

【 争点1 】

既に退任した代表取締役は自己退任後、
従業員の行為についても責任を負うか?

【 判決1 】

責任を負う。

本件代表取締役は会社の取締役を辞任し、退任登記を経た後も、グループオーナーの地位にあり、会長と呼ばれる存在であったこと、同社の支配株主であったこと等ら「事実上の取締役」にあたるとし、従業員等による過当営業行為を防止するための社内体制の構築その他適切な措置を講ずべき職務上の注意義務を負っていたというべきである、として責任を肯定した。

取締役

【 争点2 】

取締役就任前に顧客に生じた損害についても
取締役は責任を負うか?

【 判決2 】

責任を負う。

原則として取締役が自己の就任前に生じた損害については責任を負わないが、本件では、取締役に就任した後に従業員より過当営業行為が行われ、その結果、多数の顧客から損害賠償責任が追及されて会社が倒産するに至っており、会社が倒産したことによって、自己が取締役に就任する前に生じた顧客の損害補填が不可能となってしまったため、当該損害についても取締役は責任を負うとされた(間接損害)

名目的な
監査役

【 争点3 】

名目的な監査役でも責任を負うか?

【 判決3 】

責任を負う。

本件監査役は数合わせのために監査役に選任されていたいわゆる名目的監査役であったが、名目的であったとしても何ら責任は軽減されない、として全損害についての責任を認めた。

結 論

全ての役員について、
28名の顧客に対して連帯して約9億900万円の賠償を命じた。

解説

『取締役の責任(法律的な観点)』

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取締役は誰に対して責任を負っているのか

>>> 取締役は、第三者・会社のそれぞれに対して損害賠償責任を負う可能性がある

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取締役は会社に対してどんな責任を負っているか

株式会社は株主のものですが……

>>> 取締役は株主から経営のプロとして会社経営を遂行する委任を受けている(委任契約)

>>> 取締役は会社(株主)のために、善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)をもって委任事務を遂行する義務を負っている(会社法330条、民法644条)

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取締役はなぜ株主以外の第三者にも責任を負うのか

>>> 会社と取締役は別人格

>>> 会社が責任を負う場面でも取締役個人は責任を負わないのが原則

POINT

株式会社が経済社会において重要な地位を占め、しかも会社の活動が取締役の職務執行に依存しているため、第三者保護のために責任主体が拡大されている。

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